テレビのグルメ番組や雑誌などで何度も話題になり、いくつものグルメランキングでも上位の常連である「ふらの牛乳プリン」をご存知だろうか。北海道富良野市に店舗をかまえ、通信販売も手がける洋菓子店である菓子工房フラノデリスの人気商品であり、北海道の厳選された素材を生かした小さなビンに詰められたプリンである。フラノデリスは小規模な洋菓子店ではない。オーナーシェフが経営する洋菓子店として日本での知名度、売上高は業界トップレベルであり、年商は8億に達する。
フラノデリスがここまで成長を遂げたのは、やはり多くの人々から支持される洋菓子の高いクオリティが維持され続けているからこそにほかならないと言える。また、全国の大手百貨店での物産展への出店をはじめ、通信販売による全国レベルでの販売を行っていることも成功の秘訣といえる。さらに、テレビや雑誌などのマスメディアでの紹介も相乗的に効果をあげている。そして、このフラノデリスを影で支えているシステムが4Dで開発されたシステムであり、バックグラウンドでほとんどすべての業務を管理している。
○原材料とコストの管理
洋菓子店でのレシピ管理は非常にシビアである。つまり、例えば、いくつかの洋菓子を作る場合に、バター、水、生地などの原材料の数量、グラム数など、さまざまな材料の分量を事前に計画する必要がある。また、完成途中である材料(半製品、例えばシュー生地)の分量も計算する必要がある。さらに、複数の菓子に共通した材料(例えばカスタードクリーム)をどの分量で配分していくべきかを管理しなければならない。これらのことがうまく管理されていない限り、材料に過不足が生じたり、コストや時間に無駄を生じてしまう。しかもこれらの材料のほとんどは鮮度が重要あるためやり直しが難しく、厳密な管理が求められる。
フラノデリスのオーナーシェフである藤田美知男氏は、これらの原材料、原価に関するレシピ管理および仕入先などそれらに関するすべての情報を1つのデータベースで管理することで業務の効率を上げ業績の向上に役立てている。例えば、レシピ管理においては、原材料など必要な情報を入れるだけで、各洋菓子の製造量に必要な原材料の数量、グラム数、時間といった情報が計算処理され、製造工程自体に情報が生かされている。
多くの場合、上記のシステムでひとつの完結したシステムであるとお考えではなかろうか。フラノデリスでは、レシピ管理のデータベースのみとして利用しているわけではない。例えば、このデータベースは店頭で利用されているPOSレジスタとも連携されている。このPOSレジスタは、POSレジスタ用の専用端末を利用していない。おしゃれな雰囲気が必要な洋菓子店の店頭では、すべてのものをより洗練されたデザインで統一するために、Apple社製のコンピュータを利用している。
Apple社のコンピュータを導入したのはその筐体のデザインだけが理由ではない。一般的なPOSレジスタ端末はPOSレジスタ端末の機能しかない。しかし、フラノデリスでは、レシピ管理のデータベースと連携することで、業務を効率化することに成功している。その日に販売する洋菓子のデータ、例えば、名称や金額そして画像データが自動的にPOSレジスタ端末のボタンに登録され、レジチェッカーの操作性を向上させている。またショーケースの中で商品と共に並べられるプライスリストも自動的に印刷されるため、転記ミスが生じることがない。さらに、製造した数量と販売した数量を同時に管理することもできる。また、この端末からは定期的に売上げ情報が電子メールで藤田氏の携帯電話に送信される。このことによって、出張などで店舗にいない場合でも店の状況をタイムリーに把握することができる。季節によって変動するが、のべ100種類にも及ぶ商品の管理には、4Dを利用したシステムがなくてはならない存在となっている。
フラノデリスは洋菓子店とはいえ、広くビジネスを展開しているため、複数の部門がデータを機能的に活用して業務を行っている。フラノデリスが利用しているシステムは基本的にはひとつのデータベースが利用され、各部門の端末からデータベースの操作を行っている。すべて同一のデータを基本に利用されているので、データの二重化が生じることなく非常に効率よい方法と言える。
○通信販売システム
通信販売部門でも、オペレータが4Dを操作している。ここでの業務は商品の受発注業務や、顧客管理などがメインになるが、ここで入力された情報を元に製造部門で必要数を算出する。また、通信販売では24時間注文を受け付ける必要があるとともに、発送方法、支払方法の種類などによって複数のメールテンプレートの使用が必要であるが、自動的に4Dが適切なフォーマットを利用して受注時のメール配信処理を行っている。
○包装パッケージ用バーコード印刷
焼き菓子などのパッケージの裏面に貼り付けるための原材料や賞味期限が印刷されたバーコード入りのシールの出力もこのデータベースの情報を元に出力される。そのため、別システムでの余分な印刷作業を行うこともない。
○製造部門でのレシピの印刷
製造部門では、原材料の種類や分量を確認しながら作業する必要があるが、レシートプリンタを利用して、情報が書き出され小さなスリップに印刷される。そのつど、原材料の種類や数量を確認しながら作業する現場にはなくてはならない情報を提供することができる。
○社内用ドキュメントの共有
店舗内での商品の陳列方法などに関する社内用のドキュメントについても情報の共有が行われている。社員が利用しているコンピュータ上にのみ情報がある場合には情報を共有できないために不都合が生じるが、4Dのワードプロセッサプラグインである「4D Write」を利用することでドキュメントを一元管理している。
○経営分析
このシステムでは曜日別売上げ予測など、さまざまな売上げ分析を瞬時に行うこともできる。このことももちろん、ひとつのデータベース上にデータが集約されているからである。この機能には、ビルトインのグラフ描画ツールである「4D Chart」を利用している。一般ビジネスで利用できるグラフの種類がそろっており、データベースと連携しているので、別の表計算用アプリケーションにデータを書き出す必要はない。
なぜ、バックグラウンドの業務をシステム化することが必要だったのか。
原材料とコストに関するレシピ管理も重要だが、出荷量が多くなると、紙ベースのみでの発注、請求書などを束ねて管理することはできない。商品の送り忘れ、集計ミスにつながることになる。
「原材料管理、仕入れ一覧など、発注の段階ですべてのデータをデータベースに入れることで未発送などのトラブルを防ぐことが可能になります。さらに、後で集計作業を効率よくできるわけです」(藤田氏)
また、トータルコストの安さも利点のひとつであるという。専用POSレジスタ端末と、パソコンハードウェア本体とソフトウェアの価格を比較した場合に、多くの場合後者のほうが低コストであるという。もちろん、そのためのアプリケーションが必要ではあるが、自分で必要と感じた機能をプログラミングで柔軟に追加していくことが可能である。利点は、低価格で高機能なソリューションを構築できるということであろう。
そしてなぜ4Dを利用したのか。このシステムは、藤田氏自身の発想により、彼自身がデザイン、開発に着手し始めたのがはじまりである。それは4Dが藤田氏にとって必要とされている機能をもっとも実現しやすい開発環境であったからにほかならない。モノ(洋菓子)づくりが本業のシェフであるからこそ、モノ(4Dによるシステム)づくりにも才能を発揮できたといえないであろうか。そしてこのシェフがプログラムしたシステムは、アマチュアがプログラムしたシステムとはいえない。プロフェッショナルなソリューションといえるだろう。なぜならば、彼自身を実際にトップレベルのシェフへと導くことができたのだから。
4Dは、この事例ように、ユーザの発想を具体的に実現していくことが可能な開発ツールである。藤田氏はシステムの重要性、そして4Dの利便性について熱く語る。「4Dのシステムがここまで支えてきてくれたことは成功の大きな要因のひとつです。4Dでは直感的なデザインが可能ですので、効率よく操作性の高いシステムを構築することができます」
もし、オーナーシェフである藤田氏の発想を反映することができないシステムであったのならば現在の成功に近づくことは難しかったといえよう。